目は非常に小さな器官なので、喫煙や運動不足など悪い生活習慣の影響をすぐに受けてしまいます。普段の食事には「目にスペシャルな栄養素」、ルテイン、DHA・EPA、アスタキサンチン、β‐カロテンをとり入れるよう意識してみてください。【解説・レシピ監修】平松類(二本松眼科病院医師・医学博士)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

平松類(ひらまつ・るい)

二本松眼科病院医師・医学博士。昭和大学医学部卒業。昭和大学病院、彩の国東大宮メディカルセンターなどでの勤務を経て、2018年より現職。緑内障手術トラベクトーム指導医。テレビ、雑誌、新聞などでの医者任せにしないための医療解説に定評がある。一般向けの著書も多く、新刊『眼科医がすすめる目の不調を感じたら毎日食べたい料理』(KADOKAWA刊)が好評発売中。

普段の食事が目の健康に何より大切

年を取ったら目がかすんで視力が落ちてきた──誰もが経験していることでしょう。ですが、視力が落ちてきたことを、「年齢のせい」と簡単に諦めないでください。

高齢だから見えにくくてもよいわけではありません。むしろ年齢が高くなればなるほど、きちんと目が見えることが重要です。年齢を重ねると、「見えやすさ」が日々の活動に大いに関係するからです。

目が見えにくくなると、まず、危険を回避しようと外出の機会が減ってしまいます。これは、運動量、ひいては筋肉量が減ることとイコールです。

家にこもろうにも、自分自身でできる楽しみといえば、読書にテレビにパソコンと、目を使うものばかり。自分自身でできる楽しみがないと、他人に頼らなければならなくなったり、日がな一日ボーっとしていたりで、認知症になりやすくなってしまいます。

もう一つの理由として、目の見えやすさが全身の健康状態のバロメーターであることが挙げられます。

目は非常に小さな器官なので、喫煙や運動不足など悪い生活習慣の影響をすぐに受けてしまいます。言い換えると、目の状態を確認しながら生活していれば、全身の健康状態も自然と整ってきます。

では、目の健康を保つために、実際にどうしたらいいのか。私は、普段の食事に気をつけることが何よりも大切と患者さんにお話ししています。

焦げた物の食べ過ぎで白内障になる

すると、患者さんたちは「目のことなのに、食事ですか」と不思議そうな表情をされます。

目と食事との関連性について、今ひとつピンと来ない方も多いようですが、食事の内容や口からとり込んだもので目の病気のなりやすさが変わるというのは、学会レベルで報告されている話です。

たとえば、加齢黄斑変性(網膜の中心部分の黄斑がダメージを受けて変化し、視力の低下を引き起こす病気)は、ルテイン、ビタミン、β‐カロテン、亜鉛などを含むサプリメントを飲むことで発症が少なくなることが、海外での大規模調査で分かっています。

また、焦げた物を過剰に食べると、白内障(目のレンズに当たる水晶体が白く濁る病気)になりやすくなります。

私が勤務する眼科専門病院でも、手術件数が最も多いのは白内障です。症状が進むと目がかすんだり、物が二重に見えたりするようになって、視力の低下を引き起こし、最悪の場合は失明に至ります。

焦げは、食品が糖化したもので、糖化とは、たんぱく質が糖と結びつき、変性して劣化することです。身近な例として、真っ白なパンを焼いたら、こんがりしたトーストになります。これが糖化です。

トーストが悪いというわけではないのですが、糖化した食品を食べ過ぎると、私たちの体には不都合なことが起こります。

糖が結びついて劣化したたんぱく質であるAGE(終末糖化産物)は、血管や組織などを老化させる元凶物質です。AGEが目にたまることで、白内障が発症したり進行したりするのです。

「私たちの体は食べた物でできている」といわれるように、目も、これまで食べてきた物に大きく左右されるのです。

油脂が涙の質をよくする

加えて、目は外部からの光を取り込むためになんの保護も受けていない「むき出しの器官」です。そんな目を覆って保護しているのが、です。

涙には、水分の層と油分の層があります。油分の層が涙の最も表面にあることで、水分が蒸発しにくくなり、乾燥から目が守られています。ですから、涙の質を高めるには食事で油分を摂取する必要があります。

女性や高齢の方は、「太りたくない」「脂っこい料理は苦手」などの理由で、魚や肉を敬遠することが少なくありません。それでは、質のよい涙を作るための油脂に加え、細胞の材料となるたんぱく質も不足します。

このように、目の健康を考える上で食事は非常に重要です。そのため、私は7~8年前から、患者さんたちに目によい栄養素や食材を勧めてきました。

最初の段階では、栄養素だけを紹介していたのですが、「では、その栄養素はどんな食品に含まれているのですか?」と聞かれ、今度は食材を紹介すると「それは近所のスーパーでは売っていませんでした」と、実行するには難しいという声が患者さんから返ってきました。

その結果、「普通のスーパーで買える」「安く入手できる」「手軽で、目が見えにくい高齢の方でも安全なように火をあまり使わずに調理できる」などを考慮しながら、勧める食材や料理を選ぶようになり、ついには、目にいい料理の本まで出版させていただきました(『眼科医がすすめる目の不調を感じたら毎日食べたい料理』KADOKAWA刊)。

今回は、その書籍から2品、今回のために新しく考案した5品の「目にいい料理」をご紹介しています。ぜひ作って食べてみてください。

ちなみに、普段の食事には、ぜひ次の四つの「目にスペシャルな栄養素」をとり入れるよう意識してみてください。下項でご紹介しているレシピにも、これらのいずれかが必ず含まれています。

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●ルテイン

〔特徴〕カロテノイドという色素の一種で、目の網膜の黄斑部に存在している。紫外線を吸収し、病気や老化のもとになる活性酸素を除去。ルテインは目に優先的に届くので、加齢黄斑変性の予防・改善にぜひとりたい。

〔多く含まれる食材〕
ホウレンソウ、ブロッコリー、卵黄、トウモロコシなど

画像: ●ルテイン

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●DHA・EPA

〔特徴〕不飽和脂肪酸という脂の成分で、血液をサラサラにする力が強い。また、目においては涙に油分を与えて涙の質をよくしてドライアイなどに働きかける。抗炎症作用もあるため、充血や目の腫れなどにも効果的。

〔多く含まれる食材〕
アジ、サバ、マグロ、サケ、ブリ、サンマなど青背の魚全般。

画像: ●DHA・EPA

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●アスタキサンチン

〔特徴〕ルテインと同じカロテノイド色素の仲間で、赤い色素。強い抗酸化力がある上、病気に抵抗する免疫力を高めるため、眼精疲労や目の病気全般の予防・改善に効果的。油と相性がよく熱にも強いため、料理に取り入れやすい。

〔多く含まれる食材〕
サケ、イクラ、ニジマス、エビ、カニ、赤い海藻など。

画像: ●アスタキサンチン

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●β‐カロテン

〔特徴〕活性酸素を除去する抗酸化作用があり、目の不調全般に効果が高い。β-カロテンは体内でビタミンAに変わるが、ビタミンAは目の機能や粘膜の健康を保つのに必要な成分。

〔多く含まれる食材〕
ニンジン、春菊、ホウレンソウ、ニラ、カボチャ、トマトなど緑黄色野菜全般。

画像: ●β‐カロテン

見えにくさは栄養が偏っているサイン

また、料理を盛り付けるときにも、「見えやすさ」を重視しましょう

器と料理の区別がつかないようなぼんやりした盛り付けでは、食事そのものが見えにくく、食が進まないからです。

肉などを使った全体的に黒っぽい料理は白い皿に、逆にシチューのように白い料理は黒い器に盛り付けるといいでしょう。このように、普段の食事に気を配るだけで、目の見えやすさはグンと変わってきます。

ドライアイ見えにくさは、栄養が偏っているサインと考えて、普段の食事を見直しましょう。

実際、ドライアイで受診した40代の女性の患者さんについては、目の疲れや頭痛などを訴えていました。この患者さんには青背の魚を食事に加えるとともに、油脂を積極的にとり入れてくださいとアドバイスしました。

こうした食生活を送ることで、患者さんは悩んでいた目の症状が消えて、頭痛薬が不要になったと喜んでいました。

目は新陳代謝が活発なので、細胞は1ヵ月ほどで入れ替わり、目が生まれ変わります。ご自分の変化を楽しみにしながら、目の健康を保つ食材や料理をとり入れてください。

■器の選び方も重要

画像: 見えにくさは栄養が偏っているサイン

料理と反対色の皿で色のメリハリをハッキリつける
目にいい食事の基本は、まずはしっかりと三食食べ、栄養素をきちんと体にとり入れること。見えにくいと食事がしづらく、食べる量が減ります。

白い料理は黒っぽい器に、黒系の料理は白い皿に盛りつけると、見えやすくなり食が進みます(平松先生)。

眼科医推奨の「目がよくなるレシピ」

血圧や血糖値を下げるための食事ほどには目の不調を改善するための食事は、あまりなじみがないかもしれません。

でも、目だって、血液や内臓と同じように「これまで食べてきたものでできている」んです。眼科専門医が監修した「目にいいレシピ」をお届けします。

■レシピ考案/recipe 6:重信初江・recipe 7:井原裕子・recipe 1~5:古澤靖子
■料理・スタイリング/古澤靖子

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recipe 1
◎ニンジンとツナのきんぴら

画像: recipe 1 ◎ニンジンとツナのきんぴら

【目にスペシャルな栄養素】
◎β-カロテン ◎DHA・EPA

【材料】(2~3人分)
ニンジン…1本
ツナ缶…小1缶
しょうゆ…小さじ1
すり黒ゴマ…適量

【作り方】
ニンジンは皮をむいて、縦半分に切ってから斜め薄切りにする。
フライパンを火にかけてツナ缶の油を熱し、①のニンジンを炒める。水大さじ1(分量外)を加え、さらに蒸らし炒めにする。
水分がなくなったら、ツナの身としょうゆを加えて全体を炒め合わせる。
器に盛り、すり黒ゴマを振って出来上がり。

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recipe 2
◎ブロッコリーとサバ缶のパスタ

画像: recipe 2 ◎ブロッコリーとサバ缶のパスタ

【目にスペシャルな栄養素】
◎ルテイン ◎β-カロテン ◎DHA・EPA

【材料】(2人分)
ブロッコリー…小1個(200g)
ニンニク…1片
スパゲティ(乾)…160g
塩…適量
オリーブ油…大さじ2〜3
サバ缶(約200g)…1缶

【作り方】
ブロッコリーは小房に分けて洗い、耐熱のボウルに入れ塩少々(分量外)を振り、ラップをふんわりかけて電子レンジ(600W)で5分加熱する。
ニンニクはつぶしてから粗く刻む。
スパゲティは塩を加えた湯で、表示時間通りにゆで始める。
フライパンにオリーブ油と②のニンニクを入れ、火にかける。
ニンニクのいい香りがしたら、サバ缶(汁ごと)と①のブロッコリーを加え、木べらでつぶしながら炒める。
⑤に③のスパゲティを加え、スパゲティのゆで汁(大さじ2〜3)で味を整えて出来上がり。

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recipe 3
◎ブリのみそ照り焼き春菊添え

画像: recipe 3 ◎ブリのみそ照り焼き春菊添え

【目にスペシャルな栄養素】
◎ルテイン ◎β-カロテン ◎DHA・EPA

【材料】(2人分)
ブリ…2切れ
塩…少々
薄力粉…小さじ2
みそ、水…各大さじ1
みりん…大さじ2
酢…小さじ1
春菊…1/3袋
ゴマ油…小さじ1

【作り方】
ブリに塩を振り5分置いてから、水気をよくふき、薄力粉をまぶす。
みそ、水、みりん、酢は混ぜておく。
春菊は3cm長さに切る。
ゴマ油をフライパンに熱し、①のブリを入れ両面を焼く。両面が焼けたら②を加えて全体に絡める。
春菊の葉を器に盛り、④のブリをのせる。

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recipe 4
◎アボカドとツナのグラタン

画像: recipe 4 ◎アボカドとツナのグラタン

【目にスペシャルな栄養素】
◎DHA・EPA

【材料】(2人分)
アボカド…1個
ツナ缶…小1缶
小ネギ…2〜3本
マヨネーズ…大さじ2
しょうゆ…小さじ1/2
コショウ…少々

【作り方】
アボカドは縦半分に切って種を除き、身をスプーンでくり抜く。
ツナは油を切り、小ネギは小口切りにする。
①のアボカドに、アボカド以外の全ての材料を加え混ぜる。
③をアボカドの皮にこんもりと盛り、オーブントースターで10分こんがりと焼き色がつくまで焼く。

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recipe 5
◎レンジで簡単ラタトゥユ

画像: recipe 5 ◎レンジで簡単ラタトゥユ

◎ルテイン ◎β-カロテン

【材料】(2~3人分)
カボチャ…100g
タマネギ…1/4個
ニンジン…100g
ミニトマト…6個
ニンニク…1片
冷凍ホウレンソウ…50g
塩…小さじ3/4
コショウ…少々
オリーブ油…大さじ2

【作り方】
カボチャ、タマネギ、ニンジンは一口大に切る。ミニトマトは半分に切る。ニンニクはつぶす。
耐熱容器に①の野菜と、凍ったままの冷凍ホウレンソウを入れ、塩、コショウ、オリーブ油をかけて軽く混ぜ、ふんわりとラップをする。
電子レンジ(600W)で9分加熱し、全体を混ぜて出来上がり。
*冷めてから食べた方が味がなじんでおいしい。

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recipe 6
◎チンゲンサイとシラスの卵とじ

画像1: 出典『眼科医がすすめる目の不調を感じたら毎日食べたい料理』平松類監修、KADOKAWA刊

出典『眼科医がすすめる目の不調を感じたら毎日食べたい料理』平松類監修、KADOKAWA刊

【目にスペシャルな栄養素】
◎ルテイン ◎β-カロテン

【材料】(2人分)
チンゲンサイ…1株
めんつゆ(3倍濃縮)…大さじ1と1/2
水…1カップ
シラス干し…30g
溶き卵…1個分

【作り方】
チンゲンサイは1.5cm幅に切る。
鍋にめんつゆと水を入れて中火にかける。
煮立ったら①を入れ、混ぜながら弱火で30秒~1分煮る。
③にシラスを加えて溶き卵を流し入れ、卵が固まり始めたら火を止めて出来上がり。

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recipe 7
◎カボチャとツナの和風マヨサラダ

画像2: 出典『眼科医がすすめる目の不調を感じたら毎日食べたい料理』平松類監修、KADOKAWA刊

出典『眼科医がすすめる目の不調を感じたら毎日食べたい料理』平松類監修、KADOKAWA刊

【目にスペシャルな栄養素】
◎ルテイン ◎β-カロテン ◎DHA・EPA

【材料】(2人分)
カボチャ…1/8個(正味約180g)
ツナ缶…小1/2缶
マヨネーズ…大さじ1
酢…大さじ1/2
七味トウガラシ…少々

【作り方】
カボチャは縦半分に切ってから、さらに横半分に切る。耐熱ボウルに入れてふんわりとラップをかけ、電子レンジで約4分加熱する。
①のカボチャをフォークで滑らかにつぶす。
汁を切ったツナを②に加え、マヨネーズ、酢も加えて混ぜる。
器に盛って七味を振って出来上がり。

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画像: この記事は『安心』2020年2月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2020年2月号に掲載されています。

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