解説者のプロフィール

深堀真由美(ふかぼり・まゆみ)
深堀ヨガスクール主宰・ヨガ研究家。宮城県生まれ。15歳でヨガを始め、短期大学を卒業後、本格的にヨガを修行。心身の変化に驚きと喜びを、そして、楽しさすら覚えるに至る。ヨガの基本である呼吸(吸う⇔吐く)を、「丹田呼吸」としてポーズに取り入れ、すべての細胞をリフレッシュさせる「ブリーズィングヨガ」を提唱。1991年、東京・西新宿に「深堀真由美ブリーズィングヨガ教室」を開講。2005年、「深堀ヨガスクール」と改名し、多数の生徒を指導。
▼深堀真由美オフィシャルサイト
口呼吸は肺の負担になりカゼも引き起こす
私のヨガスクールに来られる生徒さんのなかにも、不快な鼻づまりに長い間悩まされるかたがおられます。鼻が詰まっていると、さまざまな弊害が生じてきます。
鼻が詰まると、きちんとした鼻呼吸ができません。呼吸自体が浅くなって十分に酸素を取り入れることができず、脳が酸欠状態に陥ります。集中力や思考力が低下してしまうでしょう。
また、鼻は、空気清浄機としての重要な働きがあります。鼻の奥の鼻腔の表面は、繊毛と粘液腺を持つ上皮で覆われていて、ホコリやウイルスが体内へ侵入するのを防ぐのです。
さらに、鼻に入った冷たい空気は温められ、乾いた空気は適度に加湿されて肺へ送られます。乾燥した空気だとうまく呼吸ができないためです。
鼻が詰まって鼻呼吸ができず、かわりに口呼吸をしてしまうと、病原菌がそのままのどへ侵入するのでカゼをひきやすくなります。また、冷たく乾いた空気が肺に送られて、肺の負担にもなります。
ヨガの世界では、呼吸を非常に重要視しています。皆さんは、ヨガというと苦しそうなポーズを思い浮かべるかもしれませんが、むしろ、呼吸のほうが大事といってもいいくらいです。
呼吸とは、心と体をつなぐ大切な物です。呼吸が乱れると、心も乱れます。呼吸を整えることで、体や心に働きかけることができるのです。
詰まっていた鼻がだんだん通ってくる
そこで、今回は、鼻づまりに悩んでいるかたのために「鼻ヨガ」をご紹介しましょう(やり方は下記参照)。
この鼻ヨガを行う際、眉間に人差し指を当てるのは、手を安定させるためだけではありません。額は、チャクラ(ヨガにおいて、エネルギーの中心となるポイント)が存在し、そこに指を当てると、エネルギーの循環を促すことができるのです。
また、鼻ヨガの呼吸で、2回息を吐き、2回息を吸うことをくり返すのは、息を吐き切る、息を吸い切ることを意識するためです。
ふだんは、無意識で行っている「呼吸」という動作について、明確な意識を持って行う
ことが大切なのです。それによって、鼻の機能回復が進みます。
できれば、鼻が詰まっているかたも鼻から吐いて、鼻から吸う呼吸をしてみてください。最初は詰まりぎみでも、鼻ヨガをくり返すうちに、しだいに鼻が通ってくるでしょう。
どうしても鼻づまりがひどく、鼻呼吸がつらいかたは、吐くときは口でもけっこうですが、吸うときは、鼻から行いましょう。鼻から吸えないかたは、舌を上あごにくっつけるようにしてください。
鼻ヨガは、入浴時に行うことをお勧めします。湿気のあるところで行えば、より鼻が通りやすくなるでしょう。
鼻ヨガのやり方

❶右手の親指で、右側の鼻の穴を、中指の第一関節で左側の鼻の穴を塞ぐ。このとき、右手の人差し指の腹を眉間の中央に置く。

❷親指を緩めて、右の鼻の穴から、息を吐く→吐く→吸う→吸うをくり返す。
❸親指で右の鼻の穴を閉じ、中指を緩めて、左の鼻の穴から、息を吐く→吐く→吸う→吸うをくり返す。
❹左の鼻の穴を閉じる。
❺②~④を5回くり返す。

※電車の中など、人目が気になる場所で行う場合には、人差し指は曲げた状態でよい。
私のヨガ教室の生徒さんたちのなかには、レッスン前は鼻づまりがひどかったのに、終わったあとは鼻が通っているというかたがたくさんおられます。これは、ヨガの呼吸によって、鼻づまりが自然に解消したためだと考えられます。
ヨガでは、右の鼻の穴から入る呼吸は「陽」のエネルギー、左の鼻の穴から入る呼吸は「陰」のエネルギーとされています。陽のエネルギーは、体を温める作用があり、陰のエネルギーは、体を冷やす作用があります。
鼻ヨガを行うことで、鼻の通りがよくなって、陽と陰のバランスを取ることができます。その結果、自律神経のバランスも整って、リラックス効果がもたらされるでしょう。
鼻ヨガは、非常に簡単にできてすばらしい効果を発揮します。ぜひ皆さんも、お試しください。

この記事は『壮快』2020年2月号に掲載されています。
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