私が最も得意とするのは「ダイエット難民」の人たちを健康的にやせさせることです。ジムのトレーナーでありながら私の指導の8割は食事です。運動は残り2割にすぎません。指導の中でも中心にすえているのが、今回ご紹介する「豚汁」です。【解説・レシピ監修】吉江一彦(JUNGLE GYM代表)

解説者のプロフィール

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吉江一彦(よしえ・かずひこ)
JUNGLE GYM代表。パーソナルトレーナー。1967年生まれ、東京都出身。幼少のころよりアイスホッケーを始め、高校代表として国体に出場。引退後、大手スポーツジムのトレーナーとして勤務した後、「ひとりひとりに合わせたオーダーメイドの身体づくりをお手伝いしたい」と独立。芸能人やセレブを相手に、パーソナルトレーナーとして活躍後、2012年に「ジャングルジム」をオープン。これまで延べ10万人の美と健康をサポートしている。各種メディア出演も多く、日本テレビ『マツコ会議』では106kgだった女性スタッフの体重を11ヵ月で半分にし、大きな反響を呼ぶ。近著に『やせて一生キープする太らないコツ』(自由国民社)がある。http://junglegym.tokyo

本当にやせたいならまずは食事の見直しから

どんな方法でもやせない」「やせてもリバウンドする」 私は、こういう悩みを数え切れないほど聞いてきました。約30年前から、スポーツトレーナーとして「どうしてもやせられない」という人たちを個別指導してきたからです。

現在、私の運営する東京・南麻布のスポーツジム「ジャングルジム」には、多くの人気芸能人や著名な経営者などが訪れます。テレビやラジオ、雑誌などで取り上げていただく機会も多々あります。

そのせいか、何か特別なトレーニングを行っていると思われることもあるのですが、私が指導しているのは、誰でも簡単にできることばかりです。

私が最も得意とするのは、何をしてもやせられない「ダイエット難民」の人たちを、健康的にやせさせる
ことです。

運動は嫌い、食事制限は続かない……。そういう人の多くを、10kg以上の減量とサイズダウンに導いてきました。これまでに指導した人は、延べ10万人以上に及びます。

ジムのトレーナーでありながら、私の指導の8割は食事です。運動は、残り2割にすぎません。

それは、体重を減らすだけがダイエットではなく、健康体をつくることがダイエットの最終目標である、と考えているからです。

考えてもみてください。たとえ5kgやせたとしても、無理なダイエットで身体がボロボロになってしまったとしたら、全く意味がないと思いませんか?

そう考えているので、ジムのお客さまには、健康的にやせるため、まずは食事について指導します。その指導の中でも中心にすえているのが、今回ご紹介する「豚汁」です(私のジムでは、正式には「ジャングルみそ汁」と呼んでいます)。

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もともとは私も、トレーナーらしく、プロテインを飲んでガッチリ運動することを指導していました。しかし、この方法だと、いったんはやせた人も、また太ってジムに戻ってきます。

その理由を突き詰めると、腸内環境に行き当たりました。

実は、腸とダイエットは深く関わっています。「何をしてもやせられない」という人の多くは、体調不良も抱えています。「疲れやすい」「体が冷える」「よく眠れない」「やる気が出ない」「うつっぽい」などです。

中高年の人だと、これらを年のせいと思いがちです。加齢の影響もないとはいえませんが、実際には、その大部分が、腸内環境の乱れからきています。

腸内環境の乱れを生んでいるのは、現代の食生活です。朝はパンと乳製品、昼はめん類やコンビニ弁当、夜は肉料理。さらに、加工食品やインスタント食品をよく利用するというのは、今の世の中で当たり前になっています。

このような食事では、腸内細菌のバランスが大きくくずれます。腸内細菌のうち、体によい働きをしてくれる善玉菌のエサになる「食物繊維」がほとんどとれないからです。また、肉食に偏ると、体にとって害になる悪玉菌の増加が促されます。

腸内には、善玉菌にも悪玉菌にもなる日和見菌もいて、実はこれが7割を占めています。最適な腸内細菌のバランスは、善玉菌2、悪玉菌1、日和見菌7とされます。

日和見菌は、善玉・悪玉のうち、優勢なほうの性質を持つので、この割合ならよい腸内環境が保たれます。ところが、食物繊維の不足や肉食過多が続いて、悪玉菌が優勢になると、日和見菌がその味方をするので、あっという間に腸内環境が悪化するのです。

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しかも、現代人が毎日のようにとっているパンなどの小麦製品には、腸で消化されにくいたんぱく質(グルテン)や添加物が含まれ、これも腸にダメージを与えます。加工食品やインスタント食品にも添加物が多いことは言うまでもありません。

添加物は、体の代謝を妨げて体を冷やします。添加物をとるのは「氷」をとるようなもので、それほど体を冷やすのです。そしてそれが、さらに腸内環境を悪化させるのです。

腸内環境が悪化すると、免疫力(病気に対する抵抗力)が低下し、カゼなどもひきやすくなります。

やる気をもたらすセロトニンという神経伝達物質の働きが衰え、自律神経の乱れにつながるため、倦怠感やうつ傾向も起こりやすくなるのです。こうして、先に挙げたような多くの不調が生じてしまいます。

その不調の一つが肥満です。肥満は、食べ過ぎや運動不足という単独の問題からではなく、腸という体の「土壌」が悪くなって起こるのです。

腸が元気に働いて、体が温かく保たれ、健全な代謝ができていれば、自然にやせて太りにくくなります。もちろん、むやみな過食も起こりません。

2週間で2~3kg減!血圧、血糖値も改善!

そのための切り札が「豚汁」です。

具材を見れば分かる通り、豚汁は食物繊維の宝庫です。しかも、体を温める作用を持つ根菜類をたっぷり使っています。かつ、低エネルギー・低脂肪で、たんぱく質もしっかり含んでいます。化学的な添加物の心配もありません。

さらに、腸を元気にする発酵食品であるみそが、味のベースであることも大切です。

現代の食生活は、有益な微生物の宝庫である「発酵食品」が少ないのも問題です。「ヨーグルトを食べている」という人もいるでしょうが、乳製品は体を冷やす上、日本人の消化しにくい成分を含んでいます。みそのように、日本に伝わる発酵食品がベストです。

こう見ていくと、豚汁は、最上の健康食であり、ダイエット食であることが分かります。

基本的に入れていただきたい具材は、ゴボウ、ニンジン、大根などの根菜類、ホウレンソウ、小松菜などの葉物野菜、ネギ、豆腐、コンニャク、豚肉または鶏肉です(詳しい作り方は下項参照)。

メインは根菜と野菜にし、これらを7割くらい入れてください。他に、キノコ類や海藻類、蒸し大豆なども、好みで入れてもよいでしょう。

豚汁は、朝食・昼食・夕食のいつとっても結構です。1日、最低1回はとりましょう。もちろん、3食でも構いません。

ただしどの場合でも、食事の最初に豚汁をとってください。それによって、野菜の成分を効率よく消化でき、食物繊維の働きも最大限に生かせます。

仕事先などで昼食をとるときも、豚汁を保温容器に入れて持参し、おにぎりなどと一緒にとると、手軽でヘルシーな食事になります。前述のポイントさえ押さえれば、分量や具材のアレンジは自由なので、楽しみながら続けてみてください。

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実際に、当ジムに肥満の悩みを抱えてきた人の大部分は、これを活用してやせています。

豚汁をとり始めると、まず快便になってきます。もともと便秘の自覚がなかった人も含めて、便の量も出方も改善するのです。同時に冷えが解消され、体が温かくなってきます。

それとともに、個人差はありますが、多くの人は、2週間程度で体重が2〜3kg落ちます。続けるとともに、その人のペースでやせていき、リバウンドはありません。また、血圧や血糖値が改善されることも、よくあります。

体調が悪かった人ほど、早く効果を感じられるでしょう。物事に対するやる気が湧いてくるのもその一つです。

腸内環境が悪いときは、やる気が湧かないので、運動も続きません。しかし、豚汁でやる気が湧いてきたら、簡単な運動をプラスすると、ダイエット効果が加速します

お勧めなのは、踏み台や階段の1段を使って行う「踏み台昇降運動」です。「台に上っては下りる」ことを1日20〜30回くり返すだけの運動ですが、ふくらはぎをしっかり使うので、全身の血流がよくなり、ダイエット効果がアップします。

壁などに手を付いて立ち、かかとを上げ下げする「カーフレイズ」も、同様に簡単で効果的です。ぜひお試しください。

◎簡単な運動を組み合わせるとより効果的!

画像1: 2週間で2~3kg減!血圧、血糖値も改善!

豚汁を食べるのに加え、踏み台や階段を使って行う「踏み台昇降」や、かかとを上げ下げする「カーフレイズ」を行うと、ダイエット効果がアップ!

画像2: 2週間で2~3kg減!血圧、血糖値も改善!

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「やせる豚汁」基本の作り方

■監修/吉江一彦(JUNGLE GYM代表)■レシピ考案・料理・スタイリング/古澤靖子

【材料】(2人分)
豚肉(バラか切り落とし)……100g
ゴボウ……50g
ニンジン……50g
大根……100g
コンニャク(あく抜き済みのもの)……100g
長ネギ……1/3本
小松菜……3株
ゴマ油……大さじ1/2
だし汁(または水)……600ml
みそ……大さじ3
豆腐……1/3丁

【ポイント】
野菜は上記以外のものでもOK。根菜を中心に、具材の7割を占めるくらいの量を入れるのがコツ。
肉は豚肉の他、鶏肉を使用してもよい。量は風味付け程度に、控えめにする。
キノコや海藻などを入れてもよい。

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【作り方】
・豚肉は3cmの長さに切る。
 ・ゴボウは皮をこそげて乱切りにする。
 ・ニンジンと大根は皮をむき、7~8mmの厚さのイチョウ切りか半月切りにする。
 ・コンニャクは一口大にちぎる。
 ・長ネギは斜め薄切りにする。
 ・小松菜は3cmの長さに切る。

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鍋にゴマ油を熱し、①の小松菜と豆腐以外の材料を炒める。

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具材をしっかり炒めたら、だし汁を加えて煮立てる。あくを取り、みその半量(大さじ1と1/2)を溶き入れて、弱火で15分煮る。
※具材を煮るときに、みその半量を加えて煮ると、具材に味が染み込んで、よりおいしくなる。

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野菜が軟らかくなったら、小松菜と、豆腐を手で崩しながら加え、残りのみそを溶き入れる。

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【出来上がり!】
ある程度の量をまとめて作っておき、1食分ずつ保存容器に入れ、冷えてから、その日のうちに食べる分は冷蔵庫へ、その他は冷凍保存しておくと便利(保存可能期間は1~2週間程度が目安)。食べるときは、鍋に移して温めるか、電子レンジにかければOK。

※コンニャクや豆腐、ジャガイモは冷凍すると食感が変わる。食べても問題はないが、気になる人はそれらを抜いてから冷凍するか、入れないで作ってもよい。

「やせる豚汁」アレンジレシピ

やせる豚汁の基本は「根菜を中心に、野菜を具材の7割入れること」です。季節の旬のものや、そのとき冷蔵庫に残っているものなど、いろいろ試して、オリジナルのやせる豚汁を極めるのも楽しいですね!ここでは、具材と風味を変えた豚汁のアレンジレシピを4つご紹介します。

カレー粉入りやせる豚汁

画像1: 「やせる豚汁」アレンジレシピ

【材料】(2人分)
豚肉(バラか切り落とし)……100g
ゴボウ……50g
ニンジン……50g
レンコン……小1節
長ネギ……1/3本
コンニャク(あく抜き済みのもの)……100g
ニラ……1/4束
サラダ油……大さじ1/2
カレー粉……小さじ2
だし汁(または水)……600ml
みそ……大さじ3
豆腐……1/3丁

【作り方】
豚肉は3cmの長さに切る。ゴボウは皮をこそげて乱切りにし、ニンジンとレンコンは皮をむいて7~8mmの厚さのイチョウ切りか半月切りにする。長ネギは斜め薄切りにし、コンニャクは一口大にちぎる。
ニラは3cmの長さに切る。
鍋にサラダ油を熱し、①を炒める。油が回ったら、さらにカレー粉を加えてしっかり炒める。
③にだし汁を入れて煮立て、あくを取り、みその半量を加えて弱火で15分煮る。
野菜が軟らかくなったら、豆腐を手で崩しながら入れ、残りのみそを溶き入れて火を止め、②を加える。

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豆乳入りやせる豚汁

画像2: 「やせる豚汁」アレンジレシピ

【材料】(2人分)
鶏もも肉……100g
ニンジン……50g
レンコン……小11節
長ネギ……1/3本
コンニャク(あく抜き済みのもの)……100g
カブ……2個
ブナシメジ……50g
ホウレンソウ……3株
サラダ油……大さじ1/2
だし汁(または水)……400ml
みそ……大さじ3
豆腐……1/3丁
無調整豆乳……200ml

【作り方】
鶏もも肉は小さめの一口大に切る。ニンジンとレンコンは皮をむき、7~8mmの厚さのイチョウ切りか半月切りにする。長ネギは斜め薄切りにし、コンニャクは一口大にちぎる。カブは皮をむいて8等分のくし形切りにし、ブナシメジはバラバラにほぐす。
ホウレンソウはゆでてから2cmの長さに切る。
鍋にサラダ油を熱し、①を炒める。しっかり炒めたらだし汁を入れて煮立て、あくを取り、みその半量を加えて弱火で15分煮る。
野菜が軟らかくなったら、②と豆腐を手で崩しながら入れ、残りのみそを溶き入れる。
豆乳を加え、温まったら出来上がり。

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すりゴマ入りやせる豚汁

画像3: 「やせる豚汁」アレンジレシピ

【材料】(2人分)
豚肉(バラか切り落とし)……100g
ゴボウ……50g
ニンジン……50g
大根……100g
長ネギ……1/3本
コンニャク(あく抜き済みのもの)……100g
生シイタケ……2枚
春菊……3株
ゴマ油……大さじ1/2
だし汁(または水)……600ml
みそ……大さじ3
豆腐……1/3丁
すりゴマ……大さじ2~3

【作り方】
豚肉は3cmの長さに切る。ゴボウは皮をこそげて乱切りにし、ニンジンと大根は皮をむいて7~8mmのイチョウ切りか半月切りにする。長ネギは斜め薄切りにし、コンニャクは一口大にちぎる。生シイタケは石突きを取って薄切りにする。
春菊は2cmの長さに切る。
鍋にゴマ油を熱し、①を炒める。しっかり炒めたらだし汁を入れて煮立て、あくを取り、みその半量を加えて弱火で15分煮る。
野菜が軟らかくなったら豆腐を手で崩しながら入れ、残りのみそを溶き入れ、すりゴマを加える。
器に盛り、②を上にのせる。

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大豆入りやせる豚汁(肉なし)

画像4: 「やせる豚汁」アレンジレシピ

【材料】(2人分)
油揚げ……1/2枚
ゴボウ……50g
ニンジン……50g
大根……100g
長ネギ……1/3本
コンニャク(あく抜き済みのもの)……100g
ホウレンソウ……3株
大豆(ドライパック)……1缶(100g)
ゴマ油……大さじ1/2
だし汁(または水)……600ml
みそ……大さじ3
豆腐……1/3丁

【作り方】
油揚げは半分に切ってから1cm幅の短冊切りにする。ゴボウは皮をこそげてささがきにし、ニンジンと大根は皮をむいて2cm角に切る。長ネギは1cmの厚さの小口切りにし、コンニャクは一口大にちぎる。
ホウレンソウはゆでてから2cmの長さに切る。
鍋にゴマ油を熱し、①と大豆を炒める。しっかり炒めたらだし汁を入れて煮立て、あくを取り、みその半量を加えて弱火で15分煮る。
野菜が軟らかくなったら、②と豆腐を手で崩しながら入れ、残りのみそを溶き入れる。

画像: この記事は『安心』2020年2月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『安心』2020年2月号に掲載されています。

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