プロフィール
田中啓之(たなか・ひろゆき)
1980年東京生まれ。実家が経営する惣菜店を継ぐために、中学卒業と同時に料理の世界へ。幼少期からずっと肥満体質だったが、20代のあるとき、体重が134kgに到達したのをきっかけにダイエットを志し、ほぼ自炊だけで50kgのダイエットに成功。その減量経験と、料理人として習得した知識や技術を生かし、「安い・ヘルシー・おいしい」と三拍子そろったレシピを日々ブログで紹介している。現在の本業はマーケティング分野で活躍するIT企業社長。集客力不足の中小企業へのノウハウ提供、販促セミナー、講演を行っている。著書に『そろそろ、やせることにしました』(KADOKAWA)がある。
50kgダイエットした港区芝浦IT社長ブログ:https://www.50kgdiet.com/
デブじゃモテない!結婚したい!
[別記事:「やせる豚汁」の作り方→]
「そろそろ、やせなくては」私が本気でそう決意したのは、30歳のとき。「このままでは、一生結婚できないかもしれない」という焦りがきっかけでした。
ハッキリ言って、デブはモテません!これは、生まれてからずーっとデブだった私が断言できます。この世の中は、デブには優しくないのです!
もともと私は食べることが大好き。実家はお惣菜屋で、幼い頃から、私はよくお惣菜をつまんでいました。自分で料理をするようになってからは、好きな物を作り、好きなだけ食べていたのです。
社会人になってからも、その食習慣は変わりませんでした。お店を4軒はしごして外食をしたこともあります。おかげで、ピーク時には体重は134kg、体脂肪率は40%に達しました(身長は169cm)。
これだけ体重が増えると、健康にも支障をきたします。当時は、健康診断で高血糖と高血圧を指摘されていました。20代にして、最大血圧は150mmHg台に(正常値は140mmHg未満)。
「このままでは、モテないだけでなく、長生きもできないかもしれない」そんな不安も、本気のダイエットの引き金になりました。
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実はそれ以前も、朝にバナナを食べる方法や、ジョギングなどでダイエットを試みたことはあります。
ただ、ジョギングは足を痛めましたし、食事制限のダイエットはリバウンドが大きくて、どれも続きませんでした。そんな経験から、食べることが好きな私には、過度な食事制限によるダイエットは無理と判断。
そこで、まず食べた物を全て記録するレコーディングダイエットを始めました。これは、食べた量を把握できるのと、記録が面倒な点が功を奏して、2桁台まで体重を落とせました。
さらに自炊も本格化。今回の「豚汁」は、このダイエット生活でよく食べたメニューの一つです。
もともとは、キャベツやトマトの水煮缶、鳥の胸肉などで作るデトックススープを作っていました。しかし、その味に飽きてしまい、具だくさんであればデトックス効果は同じだろうと考えて、豚汁を作り始めたのです。
やせたらモテ期到来!子どもも授かった!
すると、停滞期を経ながらも体重はじわじわと減少。本気の決意から4年後には、体重は78.2kgに。約50kgの減量に成功したのです。
やせ始めるのと同時に、モテ期も到来しました。そして、35歳で念願の結婚。子どもも授かることができました。
現在の体重は85kg。増減はありますが、80kg台を維持しています。
実は、体重が70kg台になったとき、少し髪が薄くなってしまったのです。そのこともあり、やせ過ぎるのも健康によくないような気がして、今は80kg台に体重を戻しました。体脂肪率は18~20%。5Lだった服のサイズは、M~Lに変わっています。
血糖値や血圧も、正常値の範囲内まで下がりました。すぐに息切れがして疲れるため苦手だった外出も、全く苦になりません。
今は、家族のぶんも含めて、ほぼ毎日、食事を自分で用意しています。食事には毎回、具だくさんの汁物を添えます。豚汁ともち麦ご飯の組み合わせは、わが家の定番メニューです。

カロリーの低い食材で具だくさんに
豚汁は、どんな具材で作ってもおいしく仕上がります。
セロリの葉も、さわやかな風味でよく合います。ダイエット中の豚汁は、イモやカボチャなどの糖質やカロリーが高い具材の代わりに、大根やキャベツなどの葉野菜、キノコ類、コンニャクなどを使うのがお勧めです。
特にキャベツは、ざく切りにしたものをゴマ油で炒めてから豚汁に仕上げると、こくと香ばしさが出ておいしいです。豚肉は、最初にしっかりと炒めて脂を出し、煮ている間に浮き出た脂をカットすれば、カロリーを抑えられます。
具だくさんにすれば、食べ応えもバッチリ。キノコ類を多めにすれば、豚肉の量が少なくても、うま味が増しておいしくいただけます。

基本の豚汁はゴマ油で豚肉と野菜を炒めて。煮ているときに出た油を取り除いてカロリーカット

キャベツをたっぷり入れてかさ増し。おいしいのにカロリー控えめ!
わが家では、豚汁は1回にたっぷりの量を作り、2食め、3食めはアレンジをしていただいています。
たとえば、残った豚汁にもち麦ごはんを入れて軽く煮れば、満腹感のある雑炊に。煮詰まった豚汁に、めんつゆとカレー粉を足し、おからパウダーでとろみをつけたものにうどんを投入すれば、ヘルシーなカレーうどんの出来上がりです。
炒めたスパイスとヨーグルト、もしくはココナッツミルクを加えて、本格派のカレーにアレンジすることもあります。スリランカでは、魚のだしでカレーを作りますから、カツオだしのうま味がカレーに合わないはずはないのです。意外に思われるかもしれませんが、コンニャクもカレーの風味によく合います。
豚汁は、牛乳やトマトとの相性もよいです。煮詰まった豚汁にトマトジュースとパスタを加えれば、スープパスタに。ベーコンや黒コショウを足せば、より本格的な味になります。

糖質は高めになるが、サツマイモを入れても甘味が増しておいしい

残った豚汁もいろいろアレンジが楽しめる。カレー粉、めんつゆ、おからパウダーを加えてうどんを入れれば、カレーうどんに大変身!
それでも残ってしまった豚汁は、冷凍保存も可能です。ただし、豆腐やコンニャクは冷凍すると食感が悪くなるため、お勧めしません。
一生続けられる豚汁ダイエット
豚汁は、具材を選んで作ればとてもヘルシーなメニューです。豚肉と野菜の栄養もとれますし、食後には満腹感も得られます。たっぷりと食べたいときは、具だけをお代わりすれば、塩分のとり過ぎを防げます。
私のように「ダイエット中でも食べたい」という人には、本当にお勧めです。
豚汁は、4歳になる息子も喜んで食べてくれます。具のネギはまだ吐き出してしまいますが、甘いサツマイモは気に入っている様子です。妻は、朝食は豚汁1杯で済ませています。豚汁は腹持ちがよいため、それで十分満足できるそうです。
豚汁をはじめとする、具だくさんの汁物を主とした食事に切り替えてから、私は以前よりも食欲をコントロールしやすくなりました。
ただ、食べたいものを無理に我慢することはありません。こってりとした料理や甘いお菓子を食べたいときは、好きなように食べています。ホテルのビュッフェなどでおなかいっぱいまで食べる日もあります。
そんなふうに、好きな物を好きなだけ食べても、翌日は豚汁などを主としたいつもの食事に戻します。
「前日にたくさん食べたから、今日は食事の量を減らす」といった、細やかな食事の調整はしません。
この「食事の調整」という考え方は、ダイエットの失敗につながりかねない危険な考え方だと私は思っています。
「昨日はあまり食べなかったから、今日は多少食べ過ぎても構わない」といった、甘えにつながるからです。
食事の内容は、1年を通じて平均をならせば十分だと思います。1日や2日食べ過ぎたとしても、他の日にダイエットに適した食事を続けていれば、体重に大きな変動はありません。
さまざまなダイエットを試しましたが、一生続けられるものでなければダイエットは成功しないと思います。
その点、豚汁は、普段の食事にとり入れやすいため、お勧めです。本気でやせたい方は、ぜひ実践してみてください。
[別記事:「やせる豚汁」の作り方→]

この記事は『安心』2020年2月号に掲載されています。
www.makino-g.jp