例えば、手作業を長時間続けると、肩がこるでしょう。逆もしかりで、肩の筋肉がこり固まったことで、指に痛みやしびれが起こることもあります。ですから、痛みが指や手首であっても、腕全体にアプローチするケアが必要です。【解説】柴雅仁(パーソナルトレーナー・鍼灸師)

解説者のプロフィール

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柴雅仁(しば・まさひと)
パーソナルトレーナー・鍼灸師。関節痛の治療や体の使い方を指導。グループレッスンなども行う。『10秒で絶好調になる最強のストレッチ図鑑』(SBクリエイティブ)など著書多数。ツイッターのフォロワーは11万人超。

原因から離れたところに症状が出るケースが多い

私は現在、「パーソナルトレーナー」として活動しています。セルフケア(自分で自分の健康を守ること)の方法と、体の使い方をお伝えする仕事です。

子供のころから運動が大好きだった私は、パーソナルトレーナーという職業を目指しつつ、細身だった体を筋肉トレーニングで鍛え、満足していました。ところが、そのころから、ケガや故障が多くなってきたのです。リハビリで筋肉トレーニングをしても奏功せず、後遺症に悩みました。

もっと体のことを知りたいと思った私は、鍼灸師の資格を取得後、体の使い方やトレーニング法などを学びました。現在は、スポーツクラブでパーソナルトレーニングを担当するほかに、雑誌や書籍、インターネットなどで、ストレッチのポイントを発信しています。

今回は、私が指導するストレッチのなかから、手の痛みのセルフケアを紹介します(やり方は下の図を参照)。

いずれも、手首や手指の機能の維持・向上に役立ちます。簡単なので、痛みがある人はもちろん、こわばりを感じたり、動きに違和感を覚えたりするという人も、習慣にしてください。

手は、日常生活を送るうえで、必ず使う部位です。「水道の蛇口をひねる」「歯を磨く」「顔を洗う」。これだけのことをするにも、手が痛かったり、こわばったりしていると、うまくできません。

一般に、痛みを和らげるために行われるのが、痛む部位へのマッサージです。皆さんも、痛みを感じたら、そこをなでたりもんだりするでしょう。

しかし、痛みの原因がそこにあるとは限りません。明らかに炎症を起こしている場合は別ですが、ほかの部位に問題があり、離れたところに症状が出るケースが多いのです。

手の指の筋肉は、手首、ひじ、わき、肩、背中へとつながっています。

例えば、手作業を長時間続けると、肩がこるでしょう。逆もしかりで、肩の筋肉がこり固まったことで、指に痛みやしびれが起こることもあります。ですから、痛みが指や手首であっても、腕全体にアプローチするケアが必要です。

指のインナーマッスルのバランスが整う

私が特に重視しているのが、インナーマッスルです。体の深部にある筋肉で、深層筋ともいいます。インナーマッスルをうまく使えるようになると、関節の動きが安定するので、表層にある大きな筋肉もスムーズに動くようになります。

一つの動作に対し、より多くの筋肉を動員することで、特定の筋肉への負担が軽減します。その結果、痛みのない、軽快に動ける体をつくることができるのです。

手の指にも、インナーマッスルがあります。利き手の親指と人差し指は、ほかの指に比べて、使用頻度が高くなり、疲労がたまりがちです。これだけで、手のインナーマッスルのバランスが悪くなります。

試しに、手の親指を外にして、握りこぶしをつくってみてください。人差し指から小指まで、均等に曲がっていますか? 「小指が曲がらず立ってしまう」「人差し指がこわばる」など、指によって違いがあるのではないでしょうか。

本来、すべての指が同じように曲がり、動くのが理想です。ところが、使い過ぎて疲れていたり、使わずに弱ったりした指は、動きが悪くなるのです。

指のストレッチをして、インナーマッスルのバランスが整うと、前腕まで効率的に動かすことができるようになります。

また同時に、手の使い過ぎによって、前腕の骨が指先寄りにズレて、手首から先を圧迫することがあります。手首つかみを行うと、骨の位置が元に戻り、痛みやこわばりが改善します。ぜひ習慣にしてください。

手の痛みのセルフケアのやり方

監修=体軸コンディショニングスクール、一般財団法人 体軸コンディショニング協会 クロスポイント® 各ワーク©体軸コンディショニングスクール

指のストレッチのやり方

画像1: 手の痛みのセルフケアのやり方

左手のひらの中指の少し下を、右手の人差し指で押す。そのまま、左手の握り開きを10回行う。

画像2: 手の痛みのセルフケアのやり方

左手のひらを押したまま、左手の人差し指の爪で親指の腹をはじく。中指、薬指、小指でも同様に行う。各指3回ずつ行う。

右手でも同様に行う。

手首つかみのやり方

画像3: 手の痛みのセルフケアのやり方

左手のひらを縦にして、親指のつけ根のくぼみに右手の親指を当て、手首をつかむ。

画像4: 手の痛みのセルフケアのやり方

くぼみに当てた親指で、前腕の骨をひじ側に戻すように、手前に引く。同時に、左手首を小指側に曲げる。3〜5回行う。

右手も同様に行う。

画像: この記事は『壮快』2020年1月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年1月号に掲載されています。

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